旅の途中、ふと立ち止まった路地の奥から、油の香りが漂ってきた。小さな屋台で、老人が黙々と生地を捻り、熱した油に沈めていく。それが麻花(マーファ)との最初の出会いだった。
麻花とはどんなお菓子?
麻花は、小麦粉の生地を細長く伸ばして二本または三本を縒り合わせ、油で揚げた中国の伝統菓子だ。外はサクサク、中はほんのりやわらかく、噛むたびに香ばしさが広がる。甘さは控えめで、塩気のあるものもある。
その形は「縒り合わせた縄」のようで、「麻花」という名前もそこから来ている。麻(あさ)の繊維を撚ったような形、という意味だ。
千年を超える歴史
麻花の起源は、唐代(618年〜907年)にまで遡るとされている。当時は「寒食節」という祭りの日に、火を使わずに食べられる保存食として作られた。寒食節とは、清明節の前日に火を使うことを禁じる中国の伝統的な祭りで、この日のために揚げ菓子を事前に準備しておく習慣があった。
清明節(チンミンジェ)は、祖先の墓を参り、掃除をする中国の伝統的な祭日。毎年4月4日〜6日頃に行われる。その前日が「寒食節」で、火を使わない冷たい食べ物だけを食べる習慣があった。麻花はこの日のために作られた保存食のひとつだ。
現代では寒食節の習慣は薄れたが、麻花は中国全土で愛されるおやつとして生き続けている。
地域によって異なる麻花
中国は広い。麻花もまた、地域によって形も味も異なる。天津の麻花は特に有名で、胡麻や砂糖をまぶした甘いものが多い。一方、北京や山西省では塩気のある素朴な麻花が親しまれている。
最近では、抹茶・チョコレート・チーズなど現代的なフレーバーの麻花も登場し、若い世代にも人気だ。
日本でも出会える
麻花は、中華街や輸入食品店でも見かけることがある。デパートの中華物産展でも時折登場する。一度食べると、あの香ばしさがまた恋しくなる。
揚げ菓子のシンプルさの中に、千年分の知恵が詰まっている。
あなたはどんなお菓子で、旅の記憶を呼び起こしますか?
